今週、法学基礎演習(2年生対象)の最終回を行いました。今回は、その授業実践をご紹介します。
テーマは、政治哲学者ジョン・ロールズの「無知のヴェール」です。
ただし、授業は理論の説明から始めません。
まず学生にはゲームに取り組んでもらい、その体験を通して考えたことや感じたことをもとに、「無知のヴェール」の考え方を学んでいきました。
学生には、新しい国をつくる「建国メンバー」となってもらい、その国の立法者として、公正な法律のつくり方を考える、授業用に独自に設計したゲームを実施しました。
ゲームでは、まず「無知のヴェール」を被った状態で議論を始めます。自分が将来どのような立場になるのかわからないまま、税金、医療、教育という社会の基本的な制度について話し合い、新しい国のルールを制定していきます。
今回は三つの国が誕生しました。同じ課題に取り組みながらも、それぞれ異なる価値観のもとで制度が設計され、三者三様の国家像が生まれたことが興味深く感じられました。
そしてゲームの終盤では、「無知のヴェール」を外します。そこで初めて、それぞれ異なる年齢や境遇などの立場が示されます。その上で、自分たちが制定した法律をもう一度見直し、「このままでよいのか」「修正する必要はあるのか」を改めて議論してもらいました。
立法とは、さまざまな立場にある人々の利害を調整しながら、社会全体のルールを形づくっていく営みです。その難しさを学生自身が「経験」として理解できるよう、シナリオ作成・ゲームの展開の仕方を練ってみました。
制度は一つひとつ独立して存在するものではなく、社会全体の仕組みとして互いに結び付いています。学生たちが、自分たちのつくった国を振り返りながら、「どのような社会を目指すのか」という視点で立法を考える姿が印象に残りました。
学生の皆さんからは
「立法者の立場になり、みんなができるだけ平等で不利益なく暮らせるような法律を作ることの難しさを感じた。」
「建国するという設定が新鮮で、立法する経験そのものが楽しかった。」
「最後に自分の立場が示されてから作った法律を振り返ることで、考え方を見直すことができた。」
といった感想が寄せられました。
この演習では、新聞記事を題材に社会問題を法的視点から考えるワークに始まり、囚人のジレンマ、トロッコ問題、そして今回の「無知のヴェール立法ゲーム」へと、思考実験を段階的に取り入れてきました。学生同士が双方向・多方向に対話しながら、「法を知る」だけでなく、「法を考え、体験する」ことを重視した授業づくりを目指しています。
今後も、教材をさらに改善し、「体験する法学」を一つのキーワードとして、学生とともに考え、議論し、新たな発見のある授業づくりを続けていきたいと思います。

